耐環境型光コネクタの選定の手引き

耐環境型光コネクタの選定

はじめに

自然災害や人災などの惨事、あるいは危険で容赦のない環境においては、高性能な光コネクタの使用が求められます。十分に光学的、環境的かつ機械的性能を確保するには、適切なコネクタを選択することが必須となります。
本書では、特性、環境、要求事項、技術、および耐環境型光コネクタの選定基準について概説します。

アンフェノールの耐環境光コネクタ技術のご紹介

範囲

極限環境、厳しい条件および誤用が、耐環境型光コネクタを必要とするアプリケーションに課せられます。想定している読者は、光ファイバ接続を使用する必要性があり、銅線を使うか光ファイバを使うかという選択において助言を必要としない人です。本書で登場するコネクタの共通スペックには、衝撃、耐振動性、温度、湿度、浸水、耐化学物質性、粉砕、強度および汚れやほこり等を含みます。

また、読者は、光コネクタについて大まかな知識を有し、光ファイバ接続に関する原則を理解していることとします。

本書で述べる技術

物理的接触(PC)と拡大ビームが、耐環境光ファイバ接続において使われる技術の主流を占めています。本書では、これら2つの技術について簡単に説明しますが、スプライス接続やその他の特殊な接続技術については触れません。本書の主な目的は、典型的な耐環境光ファイバ接続の用途にもっとも適合するコネクタについて、トレードオフ分析をすることです。

背景

過酷な環境においては、堅牢な光ファイバ接続が必要です。軍用や航空宇宙用システムは、劣悪な気候、激しい天候および劣悪な環境においても十分性能を発揮する必要があります。
同様に、エネルギー採掘アプリケーションにおいても、光ファイバ接続は厳しい条件にさらされます。

関連アプリケーション/マーケット

特に、戦術的用途、船舶や航空宇宙あるいはエネルギー採掘アプリケーションでは、光ファイバ接続にとって極めて厄介な環境が現出します。光ファイバ接続は、アライメント精度を必要とするので、これらのアプリケーションにおいては、堅牢で、精密かつ実証済みの製品が要求されます。図1に、堅牢な光コネクタがよく利用される過酷な環境を示します。


図1 堅牢な光ファイバ接続を使用する典型的な環境

軍用/航空宇宙用

軍隊では、無数のプログラムにおいて、過酷な環境下で光ファイバを使用しています。陸軍では、戦略的通信、ミサイルシステム、レーダー施設において、堅牢な光ファイバ接続を採用しています。図2のパトリオットミサイルシステムは、耐環境型光コネクタを使用する、非常によく知られた戦術兵器システムのひとつです。


図2 パトリオットミサイルシステムは光ファイバを大量に使用

帯域幅、重量および電磁干渉を考慮するとき、光ファイバ接続の必要性が高まりますが、航空宇宙用のアプリケーションでは特にそうです。機上センサーは膨大な帯域幅を要します。さらに、電磁波の影響を受けも、電磁波を放射してもいけません。光ファイバは、軍用機、民間機のいずれのアプリケーションにおいても優れた性能を発揮します。又、宇宙における光ファイバは独特な要求事項をもちます。例えば、低いアウトガス性材料の使用、宇宙放射線への被ばく、部品の長い耐用期間などがあります。


図3 光ファイバを使っているスペースシャトル

光ファイバを使うエネルギー採掘アプリケーションは、一般的に、強い化学物質への耐性、液体や気体の浸透を防ぐ不浸透性シールおよび塩水噴霧への耐性を必要とします。採掘、石油探査、掘削装置、採油プラットホーム(図4)、潜水艇および海底システムは、すべて光ファイバ接続を利用しています。これらのアプリケーションの多くは、光ファイバを用いた圧力センサーや温度センサーを使用します。耐環境型光コネクタは、高圧(25,000 psi)や250℃の温度域に遭遇する可能性があるのです。この市場においては、コネクタに加えて、光ファイバストリーマおよびフィードスルーも一般的です。


図4 海洋採油プラットホーム

海洋石油探査は、得られるデータ量が膨大なため、一般的に光ファイバ接続を含むストリーマアレーを使用します。このようなストリーマの多くが、電気信号と光信号の複合インサートを使ったハイブリッド(電気と光ファイバ)接続を必要とします(図5参照)。


図5 ハイブリッドストリーマ接続を有する石油探査船

地下では無線接続がうまく動作しないので、採鉱作業場などでは光ファイバが利用されます。もちろん、炭鉱で使用するコネクタは、火花を発生させない防爆仕様でなければなりません。図6は、長壁式せん断機です。


図6 炭鉱用光ファイバは、通信手段、有蓋貨車およびせん断機に使われています。

災害復旧/産業用途

緊急時にすぐ配備できる通信システム(図7参照)、原子力発電、放送およびセキュリティの用途は、堅牢な光コネクタを要する独特な環境が発生します。産業用光コネクタの要求事項は、しばしば帯域幅、チャネル数、EMIおよび極端な天候状況により決定されます。


図7 配備可能な災害時通信システム

要求事項

要求事項をよく理解することは、何にもまして重要です。最良の接続システムおよびコネクタを選択できるかどうかは、期待される光学性能、動作条件、機械的かつ環境的制約、信頼性の要求事項および維持管理計画をよく知りかつ理解することにかかっています。

システムや光ファイバ接続を設計する人は、部品の規定や選定において、環境以外のことも考慮する必要があります。耐環境型光ケーブルやコネクタは、厳しい取扱いと誤用にさらされることが多くあります。戦闘員は、ケーブルを使って懸垂下降したりシェルターの上に登ったりするかもしれません。油田探索の技術者は、ケーブルを使ってケーブルリールを引っ張るかもしれません。ケーブルが物体にくくりつけられ、意図しない応力下に置かれることもしばしばあります。コネクタやケーブルは、水たまりに置かれたり、車両をよじ登るために使われたり、でたらめに使用されます。配線作業においても、コネクタやケーブルを損傷する危険があります。偶然もしくはやむを得ず、光ファイバケーブルや光コネクタは、驚くほど酷使されるのです。

汚染環境下のアプリケーションでも、光ファイバを必要とすることが多くあります。コネクタの技術、気密性および清潔さのすべてが、このような環境におけるコネクタの選定および光ファイバ接続の性能に主要な役割を果たします。いずれのアプリケーションについても、ほこり、水分、化学物質への暴露、油性膜および維持管理計画を考慮する必要があります。図8は、耐環境光ファイバ接続にありがちな埃っぽい環境を示しています。


図8 多くの耐環境光ファイバアプリケーションは酷く汚染された環境下にある。

システムレベルの設計では、採用するファイバのタイプ(一般には、マルチモードまたはシングルモード)、チャネル数および実装密度を決めます。システム設計時のトレードオフ分析が、コスト、性能および接続システムのほとんどすべての特性に影響します。たとえば、波長分割多重通信技術(WDM)または高密度波長分割多重通信技術(DWDM)を使用することにより、各ファイバが複数の信号を運ぶので、実際に必要な光ファイバ接続は減ります。しかしながら、これによりシステムの重量が減る一方で、ケーブルが偶然切断されたり破壊されるようなことがあれば、1カ所だけの障害によってリスクが増大します。

光ファイバ接続を使用する理由

使用する光ファイバの選択は、一般には、帯域幅、コスト、重量、寸法、データ防護および信号距離により決まります。表1では、光ファイバと同軸ケーブルを比較しました。表が示すとおり、光ファイバは電気接続よりもかなり有利な点があります。

表1 同軸ケーブルと光ファイバの比較
  同軸ケーブル 光ファイバケーブル
(マルチ)
光ファイバケーブル
(シングル)
距離帯域幅製品 100 MHz km 500 MHz km 100,000+ MHz km
減衰/km@1GHz >45 dB 1 dB 0.2 dB
ケーブルコスト($/m) $$$$$$$$$ $ $
ケーブル直径(in.) 1 1/8 1/8
ケーブル重量(lbs/km) 450 15 15
最小曲げ半径(in.) 7 1 1
データ安全性 良好 優れている
EMI耐性 OK 優れている 優れている

光ファイバの重要な特性のひとつは、電磁干渉(EMI)、放射および感受性に対する耐性です。そのため、高い電磁干渉の環境下や高周波アナログ光伝送(Radio over Fiber)において、理想的なソリューションになります。図9は、次世代の船上固定翼機発射台用に設計された新しい電磁式カタパルト(EMALS*)を示します。


図9 EMALSシステムの光ファイバ部

*: 電磁式カタパルト(Electromagnetic Aircraft Launch System、EMALS イーマルス)とは、アメリカ海軍とイギリス海軍で2011年現在開発中のリニアモーターによって航空母艦から固定翼機を発射するシステムである。「電磁カタパルト」、「電磁力航空機発射システム」とも呼ばれる。

要求事項の決定

すでに述べた通り、システムレベルでの選定と同様に、環境および性能が要求事項を決定します。電力予算、電源と検出器の選択および冗長性要件もコネクタの選定に影響を及ぼします。要求事項を正しく認識し、理解することにより、費用がかかる再設計や変更を回避できます。過剰な仕様は、コストを上げる恐れがあります。光学性能、環境条件および機械的パラメータを明確に規定し、それらを耐環境光ファイバ接続システムの要求事項に含むことで、最適なシステムレベル性能が実現します。

耐環境光ファイバのアプリケーションについては、複数のコネクタ技術が利用可能です。物理的接触(PC)、拡大ビームおよびMTは、一般的に利用可能な技術です。特定のアプリケーションには、平面波およびシリコンV溝等の珍しい接続が適しています。物理的接触(PC)と拡大ビーム技術の詳細比較資料については、弊社までお問合せください。

システム設計で光ファイバケーブルのタイプが決まれば、ケーブルアセンブリとコネクタが決まります。光ファイバはシングルモードかマルチモードか。何チャネルか。ガラスとプラスチックのどちらのファイバが必要か。リボンケーブルが必要か、あるいは丸型ケーブルで十分か。丸型の場合、「D型」とフランジ取付けのどちらが好ましいか。どんなタイプのストレインリリーフが必要か。これらは、接続システムを設計する際に、コネクタ選定で最初に出てくる質問です。

設計上の選択事項もコネクタの選定に影響を及ぼします。コネクタ選定に関しては以下のような質問もあります。

  • 顧客が求めるのは、民用かMIL規格コネクタか。
  • 反射減衰量の要件を満たすためにAPC研磨は必要か。
  • 電気と光のハイブリッドコネクタの方が望ましいか。
  • 想定される環境には、どのような材料やメッキが必要か。
  • 誤嵌合防止のため、複数のキー位置設定が必要か。
  • 質量/重量は重要要素か。
  • 規格準拠や互換性は必要か。

動作性や試験条件を規定することも、光ファイバ接続システムの機械的特性と同じく重要です。これらの要因が、末端研磨や検査装置についての要求事項や検査パラメータを決定するからです。試験および試験方法は、確実に性能測定が行えるように十分に規定してください。複数の規格団体(SAE、EN、IPC、TIA、DOD等)が、端面、研磨、検査、クリーン度および実際の試験に関して、多くのスペックや規格あるいは提言を有しています。

要するに、明確に規定し、よく理解し、要求事項を満たせば、期待に添うためのお膳立てができるわけです。適切な要求事項の規定が性能リスクを低減し、システム全体の性能を満足させます。十分に性能および要求事項を規定すれば、何度も試行することなく一度で良い結果が得られます。

材料

大抵の場合、それぞれのアプリケーションや環境は、ある種の材料がもっともよくマッチするという特定の要求事項を持っているものです。たとえば、海洋の塩水噴霧の腐食性に耐えうる材料および保護コーティング能力は、海洋船舶のアプリケーションでは最も重要といえます。航空宇宙向けの機体性能は重量により決まるので、コンポジットコネクタが一般的です。重量の制約に加えて、機体のエンジンコネクタは、比較的高温に耐える必要があり、チタンコネクタが必要かもしれません。本書では、コネクタで使われるさまざまな材料について詳細に分析しませんが、これらの要求は、コネクタの選定をするときには考慮しなければなりません。コネクタに使う材料やメッキについての情報は、弊社までお問合せください。

アプリケーション/マーケット固有の要求事項

耐環境型光コネクタの各市場は、通常、その市場に関連した要求事項を持っています。市場別に共通した耐環境型光コネクタの要求事項を一般化して、表2に示します。

表2 共通する耐環境型光コネクタのアプリケーション/マーケット別要求事項
船舶用 戦術用 航空宇宙 宇宙 石油およびガス
腐食 堅牢さ 振動 アウトガス シングルモードAPC研磨
湿度 降雨 重量 重量 ハイブリッド
塩水噴霧 湿度 EMI/RFI 放射線 腐食
衝撃 ほこり     シーリング
シーリング       温度
        圧力

たとえば、船舶用では、衝撃、湿度、特に腐食環境に対して厳格な要求事項があります。船舶用コネクタは、剛性試験に耐えなければなりません。AEGISプログラムでは、光ファイバ接続を大量に使用しています。AEGISとは、海軍の最も近代的な海上戦闘システムであり、最新レーダーとミサイルシステムとを統合して開発されたものです。図10を参照。


図10 AEGIS等の海軍兵器システムは耐環境型光コネクタを採用しています。

要求されるスペック

コストに悪影響を与える可能性があるため、要求事項を過剰に設定することについては注意を要します。リスク、コストおよび故障の可能性をよく審査して、どの要求事項を規定し、どの試験で確認するかを決定する必要があります。逆に、過少に要求事項を規定すれば、得られるシステムが性能期待値を満たさない可能性があります。

それぞれのアプリケーションまたはプラットホームには、それぞれの光コネクタがそうであるように、独特の要求事項があります。考えられる環境および仕様のすべてについて、完全かつ包括的リストを提供することは、本書の目的ではありません。表3は、光コネクタ(およびケーブルアセンブリ)で規定される一般的なスペックを示します。

表3 光コネクタとケーブルに対する要求スペック

  • 海抜
  • アウトガス
  • ケーブルの屈曲性
  • 偏光(PMD、PDL、消光比)
  • ケーブルの引張試験/ケーブルの保持力
  • 圧力
  • ケーブルシールの屈曲性
  • 放射
  • 化学物質耐性
  • 反射減衰
  • 嵌合離脱力/トルク
  • RF/EMI 感受性、放射、被放射
  • 漏話
  • 塩水噴霧
  • 圧縮抵抗
  • スクーププルーフ
  • 保護キャップの保持力
  • シーリング;光学接合シーリング;ケーブルシーリング
  • 外部曲げモーメント
  • 自己消火性(難燃性)
  • ファイバ引張力
  • シェル対シェル伝導性
  • 屈曲持続時間
  • 衝撃
  • 流体浸漬
  • 寸法
  • 凍結水
  • 傾斜
  • 湿度
  • 太陽放射
  • 氷クラッシュ
  • 保存温度
  • 衝撃
  • 浸水
  • 軸方向の挿入保持力
  • 温度サイクル
  • 半径方向の挿入保持力
  • 温湿度サイクル
  • 挿入損失
  • 温度による寿命変化
  • 置換性
  • 引張荷重
  • 嵌合互換性
  • 光端子引張試験
  • メンテナンス性
  • 光端子ばね力
  • 嵌合耐久性
  • 光端子挿入・引抜力
  • MTBF (平均故障間隔)
  • 熱衝撃
  • 泥/泥洗浄
  • ねじり
  • 非動作時温度
  • 均一性
  • 動作温度
  • 振動(多種の)
  • 光学不連続
  • 水圧
  • 光強度
  • 重量および寸法
  • 光学的歪み

試験要件の指定

コネクタ(またはケーブル)を指定する場合は、試験要件に留意する必要があります。一般的には、挿入損失、温度、振動等の要件を公式または非公式に試験し確認します。予算的な制約、性能リスクおよびスケジュールにより、試験すべきコネクタのパラメータおよび特性が決まるかもしれません。要求事項によっては、設計等での認定をそのまま検証方法としても構いません。特に試験済みの部品または仕様に合致した材料を使う場合は、アウトガス、RoHS対応、もしくは難燃性に関する試験や検証をすることは稀です。プロジェクトを成功に導く要求事項を見極めて、厳しい環境、安全性および光学性能などを試験することになります。

製品を比較する場合は、試験要件および実施する試験を詳細に検討する必要があります。多くの試験には、さまざまなバリエーションと試験仕様があります。試験条件は類似していても、その試験時間や厳格さは多種多様です。温度試験は、指定さえすれば比較的簡単です。衝撃および振動の要求事項については、2つの製品の試験要件を同じ土俵で比較できるかどうか判断するために、より深く仕様を理解せねばなりません。

類似の再現可能な試験結果を得るためには、光学測定方法、処理工程や手順を適切に規定しなければなりません。シングルチャネルのケーブルまたはプローブを使うのと、マルチチャネルのコネクタを使って試験をするのでは、異なるテスト結果が得られます。照射条件、参照および試験セットアップも同様に十分規定する必要があります。業界標準または推奨方法を採用することは、どういう製品が必要か、どういう試験が必要か、または一見類似する製品を比較する場合などに有用です。

実際の要件 vs. 推定される要件

要件の規定は重要ですが、我々の業界内に共通する誤解や誤解を招く情報も存在します。入念に作られたデータシートやデモ実演によって、実際は違うのに、製品が要求事項を満たし、必要条件を備えているかのように信じ込む可能性があります。もし製品が厳格かつ実際の試験をされていないのであれば、必要条件を満たし、仕様に準拠していると証明する根拠はありません。権威ある認定機関による試験データや報告書、あるいは認定書が入手できない場合には、「~に従い設計された」、「~のために設計された」または「同等な」と言った一般的に誤解を招く表現については疑って考える必要があります。米国防総省は、米軍規格を満たす製品の認定部品表(QPL)を発行しています。

多くのスペックやデータシートには、「標準的な(TYP)」等の言葉がよく出てきます。適用可能なスペックにも、最大、最小パラメータまたは値が含まれます。平均値を製品説明に明記する場合は、サンプリング数量や標準偏差の情報を、測定方法およびプロセスとともに規定する必要があります。全パラメータは計算または測定可能でなければなりません。「標準値」というのは、このように定量化され、きちんと定義をされた場合にのみ、意味を持ちます。

接続挿入損失 vs. コネクタ挿入損失も、誤解を受けやすい言葉です。接続とは、コネクタ自体ではなく、測定されうるものです。実際のコネクタ性能とは違い、マーケティングの誇大な宣伝の例としては、ビデオ送信における光ファイバの使用があります。デモ実演では、光ファイバのリンクがソース(カメラ、ビデオプレイヤー等)とディスプレイ(テレビ、モニター、LCDスクリーン等)との間で映像を運びます。ディスプレイに映る映像は、十分に基準に合格しており、明るく高精細で解像度も素晴らしく見えます。しかし、これは質的な表示を示すものであり、他のアプリケーションでは致命的になりかねない光ファイバリンク固有の挿入損失を示していません。つまり、このようなデモ実演で、データ送信に光ファイバ接続が適しているとはいえないのです。

望ましい光コネクタの設計特性

アプリケーション、環境および機械的特性に加えて、光コネクタは、次のような固有の性質や特長を生かした設計がされねばなりません。

  • 低挿入損失
  • 後方反射が最小
  • 低背バックシェル
  • 非回転素子
  • 最小の汚染/シーリング
  • アライメント層
  • 嵌合離脱サイクル
  • フローティングタイプ、自動アライメントの光端子
  • 終端(結線および修理)の容易さ
  • ケーブルおよび終端ストレスが低い
  • メンテナンス可能/洗浄可能/修理可能
  • 高密度

シングルモードの光コネクタなら、さらに次のような設計特性を生かすことも必要です。

  • セラミックフェルール
  • 分割されたセラミックスリーブ
  • 低い後方反射
  • 厳密なフェルールの同心度と直径寸法
  • 凸面形状に研磨したフェルール設計
  • 取り外し可能なキャプティブアライメントスリーブ
  • 精密アライメントシステム
  • APC研磨

光コネクタおよび技術

耐環境型光コネクタは、一般に、2つの主要なカテゴリーにまとめることができます。すなわち、物理的接触(PC)と拡大ビームです。これら2種類の異なりかつ容易に利用可能な技術は、それぞれさらにグループ分けされます。アンフェノールは、これら2種類の技術について、「光コネクタの物理的接触方式と拡大ビーム方式(英文)」と題する比較論文を発表しています。この論文は、これらの技術がそれぞれどのように光を伝送するか、またさまざまな技術特性について詳述しています。

物理的接触(PC)

最も一般的な物理的接触(PC)光コネクタは、単一または複数キャビティのフェルールにファイバを直接収納して、それを丸型か角型の筐体に入れた、単一または複数の光端子を持つコネクタです。物理的接触光コネクタは、通常極めて優れた光学性能と模範的な環境性能が、さまざまな形状で入手可能です。手短に言えば、物理的接触光コネクタは、嵌合時に、2つの光ファイバ素子(ガラスまたはプラスチックファイバ)を接触させ信号を伝送するアライメント機構を提供します。

いくつかのアライメント機構を有するのが光コネクタの特長です。コネクタのシェルは、キーウェイまたは嵌合ネジのいずれかにより嵌合し、およそのコネクタアライメントが決まります。複数の光端子を有するコネクタのシェルやハウジングは、通常インサートまたはアライメントスリーブホルダを内蔵しており、それで位置決めします。また、インサートのピン位置を決めることにより、インサートがフローティングしている個々の光端子をしっかりと捉え、より細かなアライメント調整ができます。2つの嵌合する光端子間の精確な光学アライメントは、アライメントスリーブリテイナまたは嵌合する光端子の一方に保持されたアライメントスリーブによって実現します。

各光端子は、通常セラミック(立方晶系ジルコニア)のフェルールを持っています。光ファイバは、フェルールおよび研磨された端面内へエポキシ充填されます。通常、一方または両方の光端子にばねがあり、2つの光端子の間にしっかりと十分な嵌合力を与えます。図11は光コネクタの断面図で、2つの嵌合する光端子の2本のファイバ間の接続を示します。


図11 物理的接触(PC)

図12は、M29504/14(ピン)およびM29504/15(ソケット)光端子を示します。キャプティベータは、セラミックのアライメントスリーブを内蔵し、光端子がパチッとはまって、「ソケット」の光端子を作ります。クリンプスリーブは、ファイバ(ケーブル)を光端子に取り付けます。クリップは、光端子をインサート内で保持します。


図12 M29504/15(上)ソケット光端子およびM29504/14(下)ピン光端子

図13に示す雌雄同形のTFOCA-II®の光端子は、嵌合する2つのコネクタに各々含まれます。TFOCA-II®のアライメントスリーブは、挿入キャップ(アライメントスリーブリテイナに類似)内に固定されて保持されます。これにより、同じ光端子を「ピン」と「ソケット」の両方に使用することができます。


図13 雌雄のないTFOCA-II®光端子

耐環境型物理的接触(PC)光コネクタの例を以下に示します。

ST

STコネクタは、民用および軍用に使われる単一チャネルの光コネクタです。堅牢化バージョンは、船舶用にも使用可能で、高い耐衝撃性および耐振動性を有します。筐体がステンレス製のため、耐腐食性にも優れます。STコネクタは、挿入損失特性に優れますが、APC研磨は殆ど出回っておらず、規格化もされていません。


図14 軍用M83522/16コネクタおよびアダプタ

M28876

M28876コネクタは、優れた光学性能と耐環境性を有しています。この船舶用コネクタは、耐衝撃性に優れ、際立った耐腐食性を有しています(塩水噴霧2000時間)。M29504/14および/15光端子を使用します。さまざまな形状のバックシェルが選択でき、高耐振動バージョンもあります。


図15 MIL-PRF-28876レセプタクル

CF38999

このコネクタは、もともと電気コネクタですが、光ファイバ端子(M29504/4および/5)を挿入して光コネクタとしても使えるようにしたものです。航空宇宙用のアプリケーションに幅広く使用されており、容易に入手可能です。光学性能は、光端子の密度とトレードオフの関係にあります。使用するインサートのアライメントと許容誤差という関係上、高密度になるほど光学性能の損失が発生します。許容誤差をより厳しくしたバージョンもあります。AS5590は、厳格な許容誤差を持ったD38999準拠のコネクタですが、製造業者間で互換性の問題が発生しており、まだ市場ではあまり受け入れられていません。


図16 M29504/4 および/5 光端子のCF38999コネクタ

TFOCA

このコネクタは、マルチモードのみで使える雌雄同形のデザインにおいて、やや旧式の双円錐形光端子をベースにした技術を特長としています。もともと、この技術は、電気通信の分野で使用されていましたが、戦場における戦術通信のアプリケーションに用途が広がりました。


図17 双円錐TFOCAプラグコネクタ

mTACh

mTAChは、耐環境光ファイバ用オペレーションおよびアプリケーションに適した、小型で、堅牢、気密性のある2チャンネルの雌雄同形戦術コネクタです。材料やめっきの選択肢が豊富にあります。


図18 mTAChコネクタ

TFOCA-II®

TFOCA-II®は、雌雄同形戦術用の陸上向けコネクタです。きわめて堅牢で幅広く実戦に配備されており、4チャネルと12チャネルがあります。この気密性コネクタは、戦闘環境において優れており、400ポンドを超える引張力に耐えることが可能で、非常に高い破壊耐性を有し、材料およびめっきも膨大な選択肢の中から選ぶことができます。戦場での高信頼性と保守のし易さで広く知られている、このコネクタを発明、特許取得したのはアンフェノールですが、現在、米陸軍の戦術戦場および通信システム向け光コネクタの標準に指定されています。このTFOCA-II®コネクタは、大きく挿入損失を低減させずに水中で嵌合させたり、WD-40をスプレーすることができます。ただし、このような使い方が推奨されているわけではありません。


図19 さまざまなTFOCA-II®コネクタ

TFOCA-III®

TFOCA-III®は、TFOCA-II®と同じシェルを使っていますが、より高密度の接続を可能にする1.25mmのフェルール型光端子を内包しています。このコネクタは、6チャネルと24チャネルのものがあります。


図20 24チャネルのTFOCA-III®

THD(戦術的高密度)

THDコネクタは、優れた光学性能および耐環境性を有しています。これは、大規模の戦術通信システムおよび災害復旧時で使われる大型で重いコネクタです。THDは、108芯までの光端子が使用可能で、材料およびめっきの種類も豊富です。


図21 THDレセプタクル

ARINC 801

ARINC 801は、丸型光コネクタの民間航空機用規格です。ARINC 801型の光端子は、D38999 series III、ARINC 600、ARINC 801およびEPX型コネクタでも使えます。ARINC801光端子は、セラミック製の1.25mm LCフェルールがベースになっています。


図22 ARINC801 コネクタと光端子

NGCON (MIL-PRF-64266)

次世代コネクタ(NGCON)は、極めて優れた光学性能および耐環境性を提供します。この製品は、耐環境向けの船舶用および航空宇宙用コネクタであり、MIL-PRF-29504/18の光端子と産業用の耐環境光ファイバで使われた設計を採用しています。


図23 MIL-PRF-64266(NGCON)およびMIL-PRF-29504/18,/19,/20 光コンタクト

SMPTE 304

SMPTE304 コネクタファミリーは、放送産業、特にHDTVマーケットで広く使用されています。このコネクタはSMPTE310ケーブルを使用し、2チャネルのシングルモードで使う場合が多く、光端子に加えて2つの電源用と2つの信号用の4つの電気コンタクトを含みます。


図24 SMPTE 304コネクタ

SMPTE 358

4チャネルの雌雄同形コネクタのSMPTE 358は、放送産業において使用されることが多いです。このコネクタは、ゴルフコース、スタジアムおよびレース場などで、複数の放送アプリケーションに使用されます。


図25 SMPTE 358コネクタ

AquaLink®

ガスや石油の採掘市場用ダウンホールコネクタであるAquaLink®は、高温、高圧および厳しい耐化学物質性が求められる環境に最適です。


図26 AquaLinkRレセプタクルおよびプラグコネクタ

StapleMate

StapleMateコネクタは、油圧ホースに対する油圧継手に代わるものであり、採掘における「長壁」シールド通信において使用されます。この8チャネルのハイブリッドコネクタは、M29504/14と/15の光端子およびAWG 16コンタクトを組み合わせて使います。StapleMateコネクタには、採掘アプリケーションに適した材料を使っています。


図27 StapleMateレセプタクルおよびプラグコネクタと部品

MT

一般に広く普及している物理的接触(PC)技術のひとつに、MT型コネクタがあります。1個のMTフェルールに通常12本か24本のファイバを内蔵し、軽量かつ小型ながら、光端子密度が非常に高いです。ファイバの末端は、多孔フェルール内で直線的に保持されます(図28参照)。


図28 24チャネルのMTフェルール

MTの光学性能は、多くのアプリケーションにおいて十分ではありますが、ファイバアレイとして性能の均一性、環境適性、研磨特性を得ることは、要求事項によっては難しい場合があります。MTアレイは、様々なコネクタハウジングで利用可能です。例えば、図29は複数のMTコネクタを堅牢なD38999コネクタ本体に収納しています。MT38999の製品ページはこちら。


図29 4つの12チャネルMTフェルールを収納したMT3899

V溝タイプ

V溝型システムでは、軽量かつ小型ながら、比較的高い光端子密度が得られます。MTフェルール技術と同様に、光ファイバが溝付きのシリコンやガラスもしくは他の基材上に整列します。高価ですが、小型軽量で優れた光学性能を有します。なお、既製の耐環境型光V溝タイプコネクタは殆ど出回っていません。


図30 ファイバを含むV溝

拡大ビーム

拡大ビームコネクタは、物理的接触(PC)コネクタよりも洗浄が容易で、ほこりや汚れの小さな粒子の影響を受けにくいという特長があります。良好な光学性能と衝撃および振動に対する適度な許容が、拡大ビームコネクタの特長です。拡大ビームコネクタは、通常、ファイバの末端上またはその付近にレンズを有します。光学信号は、この光学素子またはレンズを介して劇的に拡大され、通常は平行な光線になります。拡大されたビーム信号は自由空間を伝達します。しかしながら、この技術は、レンズ上の結露、指紋および炭化水素/油性膜に弱く、これらが挿入損失の問題を引き起こす可能性があります。

ビームの拡大は、ボールレンズ、非球面レンズ、平凸レンズ、グリンレンズ、拡大ファイバコアおよびレンズ型ファイバ端面形状を含む多様な手段を介して実現されます。図31は、ボールレンズによる拡大ビームコネクタおよびその接続の断面図です。なお、ライトブルーのボールレンズ間は間隙で分離されます。


図31 拡大ビーム(EB)コネクタ断面

拡大ビームコネクタは、レンズを光ファイバの一部としたり、レンズをインサート内に保持したり、個々の光端子にレンズを含んだりして設計できます。耐環境光ファイバアプリケーションで使用される多くのレンズは、BK7、LaSFN9、AL2O3、またはLaSF35等のガラスですが、成形レンズも選択肢の1つとして可能です。レンズ化された光端子およびレンズを含むインサートについては、図32および33を参照ください。


図32 拡大ビームレンズを含む光端子


図33 拡大ビームレンズを含むインサート

ビームのアライメントは、光学挿入損失性能にとって非常に重要です。グラフ1の挿入損失の増大率が示すとおり、ボール対ボールのビームオフセットは、角度ビームアライメント(フェルール傾き)やレンズ対光ファイバ(フェルール対ボール)のアライメントに比べて、挿入損失が少ないです。

拡大ビーム位置オフセット(mm) vs. デルタIL(dB)

グラフ1 拡大ビームのアラインメントと挿入損失の関連性

以下に耐環境型拡大ビームコネクタの例を示します。

TACBeam®(MIL-PRF-83526/20 &/21)

TACBeam®拡大ビームコネクタは、4チャネルであり、マルチモードでは2dB、シングルモードでは2.5dBというMIL規格の挿入損失を実現します。コネクタは、ほこりに強く、雌雄同形で、様々なケーブルに終端でき、かつ異物も容易に取り除けます。現在、この製品の認定(QPL)供給業者は存在していません。


図34 TACBeam®拡大ビームプラグコネクタ

Lux-Beam

Lux-Beamコンタクトは、D38999、EN4165、EN3645シリーズなどの電気コネクタで使用できる拡大ビーム型の光コンタクトです。電気コネクタのサイズ16のコンタクトをLux-Beamで置換することにより、容易に拡大ビーム型光コネクタに変換できます。ディスプレイ(HUD)、戦術通信、航空通信などの過酷な環境で、光ファイバと電線のハイブリッド接続をするために最適なソリューションです。
嵌合時もレンズ同士は非接触なため、突き当て式光コンタクトに見られる摩耗による光学性能劣化は起こりません。また一般の拡大ビーム式光コネクタと同様に、埃や異物などの汚染影響を最小限に抑えることができ、メンテナンス性が格段に向上します。

Lux-Beam
図35 Lux-Beam

CTOS

CTOS拡大ビームコネクタは、ステンレススチール製で、レンズ素子を保護するウィンドウを有し、マルチモードまたはシングルモードで使われます。戦術マーケット向けのこの堅牢なコネクタは、過酷な環境およびマーケットにおいて広く使用されています。


図36 ウィンドウ付CTOS拡大ビームコネクタ

耐環境型光コネクタ選定のトレードオフ分析の例

明確に要求事項を決めることで、コネクタ選定のトレードオフ分析が可能になります。代表的なやり方は、複数の光コネクタの様々な特性と要求事項の比較表を作成します。各要求事項は、重要度レーティングに応じて倍掛けします。コネクタの選定と検証は、このようなトレードオフ分析に基づきます。

たとえば、ある航空宇宙プラットホームが、複数のシングルモード光ファイバ接続が必要であると想定します。要求事項としては、非常に厳しい衝撃や振動下においても、優れた光学性能、低い後方反射と適度な重量です。いろいろなタイプの既存コネクタを、以下の要求事項に限定して、表4で比較します。

  • 航空宇宙プラットホーム
  • 複数のシングルモードファイバ
  • 優れた挿入損失性能
  • 低い後方反射
  • 厳しい振動および衝撃
  • MIL規格の温度範囲
  • Radio-over-Fiber/センサーアプリケーション
  • 低から中程度の重量


表4 耐環境型光コネクタのトレードオフ分析
表4をPDFで開く

各コネクタまたはケーブルアセンブリの特性には、要求事項に基づく重要度レーティングをつけます。本書では特に記載しませんでしたが、民生用の既製品(COTS)のシングルチャネルコネクタがこのトレード表には含まれています。この例のコネクタ選定トレードオフ分析表では、NGConコネクタの評価が一番高く、選択されるべきコネクタとなります。

ツールおよび終端の要求事項

耐環境型光コネクタの選定(または設計)の最後になりましたが、トレーニング、トラブルシューティング、メンテナンスおよびサポートについて記述します。この領域では、コネクタの選定について数限りない疑問にぶつかります。

  • 損傷したコネクタは、修理されるのか交換されるのか
  • フィールド、倉庫または工場において、コネクタは修理されるのか、または交換されるのか
  • 設置者、ユーザおよび/または修理技術者は、どの程度のトレーニングを要するのか
  • アセンブリのメンテナンス計画
  • ケーブル/コネクタの検査および試験の方法
  • 設置、検査、メンテナンスおよび/または修理の際に電力は必要か、また利用可能か
  • 設置/修理/交換に必要なツール
  • 推奨されるコネクタの洗浄プロセス
  • コネクタ洗浄の容易さ
  • 平均修理期間
  • 故障の隔離方法
  • 取り外し可能な光端子は必要か

典型的な光ファイバ終端および修理キットについて図36に示す。


図37 光ファイバ終端および修理キット

結論

耐環境型光コネクタを選定するときは、要求事項をよく理解し、明確にせねばなりません。性能、環境、物理的制約が光コネクタを選ぶときの基準になります。最適な性能を得ようとするならば、設計する人は、使おうとするアプリケーションにはどのような製品や技術が最適なのかを判断するために、システムと光ファイバ接続のトレードオフ分析をしっかりとしなければなりません。

耐環境型光コネクタの選定 PDF