RF / マイクロ波アブレーション用途における最適な同軸ケーブル選定のための技術的検討事項

RF / マイクロ波アブレーション用途における<br>最適な同軸ケーブル選定のための技術設計ポイント

医療分野においては、安全性、コスト、効率が常に重要な要素であり、医療の進化を方向づけています。技術の進歩に伴い、より多くの医療および外科的処置が低侵襲(ミニマルインベイシブ)に実施可能となり、コストやリスク、回復時間の低減が実現されています。

これらの進歩には、低侵襲治療としてのRF(ラジオ波)アブレーションおよびマイクロ波アブレーションが含まれます。RFアブレーションは電気エネルギーを、マイクロ波アブレーションはマイクロ波エネルギーを用いて組織を加熱・焼灼します。これらは総称して電気外科的アブレーションに分類されます。エネルギー伝達技術の継続的な進歩により、この種のアブレーションシステムはますます安全かつ効率的になっています。

電気外科的アブレーションシステムは、ISM(産業・科学・医療)帯域において、915 MHz、2.45 GHz、5.80 GHzの周波数で動作し、50W(+47 dBm)以上の出力を扱います。これにより、生体組織内で熱作用を発生させ、特定部位にエネルギーを集中させて異常細胞を破壊することが可能となります。これにより、侵襲的な外科手術や長期の回復期間を回避できます。

この技術は、切除不能な肝臓、肺、腎臓の腫瘍治療において重要な用途を持ち、その他にも体内の腫瘤縮小や、下肢の慢性静脈不全、慢性的な背中や首の痛みなど、さまざまな疾患の治療にも使用されています。

アブレーションシステムにおける同軸ケーブルの役割

電気外科的アブレーション装置は、ジェネレーターと、1つ以上の電極を備えたアブレーションカテーテル(操作部のハンドル注)を含む)で構成されます。ジェネレーターはさまざまな電気波形を生成し、その波形の変化に応じて組織への作用も変化します。これらのシステムでは、アブレーションカテーテルを患者に挿入し、先端の電極またはアンテナを介して電磁エネルギーを対象組織に集中させます。この電磁エネルギーは、小径で低損失の同軸ケーブルアセンブリを介して、カテーテル先端へと供給されます。

アブレーションシステムには複数の同軸ケーブルアセンブリが存在し、ジェネレーターとカテーテルを接続するリードケーブル、およびカテーテル内部に組み込まれるマイクロ同軸ケーブルが含まれます。この用途では、最適な電力伝送と熱特性・制約のバランスが求められるため、RFおよびマイクロ波アブレーション用の同軸ケーブルは高度に特化された設計となります。

ケーブル径が制限される中で電力処理能力が課題となるため、電力効率、放熱性、柔軟性、操作性のバランスを取るためのトレードオフ設計が必要となります。そのため、ケーブルおよびコネクタは用途ごとにカスタマイズされる必要があります。また、最適な性能を実現するためのケーブル選定は極めて重要であり、場合によっては生命に関わる要素となります。

さらに、同軸ケーブル設計における根本的な課題として、装置が小型化するほど電力回路内の熱密度が高くなるという問題があります。そのため、高出力に対応しつつ操作性を確保するためには、繰り返しの動作に耐える可動性、屈曲に強い構造、狭小空間での取り回しやすさ、さらに干渉を防ぐための十分な絶縁性能が求められます。

高性能同軸ケーブル選定における主要要素としては、低損失、電力および熱管理、信頼性と安全性、シールド性能、操作性と統合性が挙げられます。

低損失は重要な要件であり、ケーブルの減衰は誘電体や導体材料、長さ、径、周波数に依存します。特に長尺のリードケーブルでは低損失が不可欠であり、損失が大きい場合は電力伝送効率に大きく影響します。また、損失は周波数の上昇とともに増加し、過度な損失はケーブルおよびカテーテル先端(アンテナ/電極)の温度上昇を引き起こし、信号経路上での不要な発熱を招きます。

注)ハンドル:カテーテルと接続し、エネルギー照射の操作および制御を行う操作部

電力および熱マネジメント

アブレーション装置では、効果的な治療のために100W以上の出力が必要となる場合があります。ジェネレーターとアブレーションカテーテルを接続するために長尺ケーブルが必要になると、その長さに比例して損失が増加し、出力効率が低下します。例えば、挿入損失が3 dBのケーブルでは、ジェネレーター出力の半分しか伝送されません。この損失はケーブル内で熱として消散されます。

ケーブル表面温度の上昇は、患者および医師にとってリスクとなります。医療処置は通常、一定の温度範囲内で安全に実施される必要があり、IEC 60601-1などの規格で許容温度が規定されています。

このため、ケーブル損失による発熱を管理するために、能動的な冷却が必要となる場合があります。一部のメーカーでは、ケーブル内を循環する液体冷却(生理食塩水など)を採用しています。これは、電気系統とは分離された送液・戻りラインを持つ閉ループ構造として実装されます。

また、同軸ケーブルの金属編組や外装ジャケットは、熱放散を助ける役割を果たす場合もあれば、逆に断熱材として作用する場合もあります。重要なのは、装置外表面の温度が安全基準を超えないように設計することです。

信頼性と安全性

安全で信頼性の高い性能は、電力要件および発熱と密接に関連しています。特に高周波またはマイクロ波エネルギーを扱うため、ケーブルとコネクタの接続部の完全性や保持力が重要となります。高出力ケーブルや制御回路の配線に断続的な接触不良や遮断が発生すると、重大な安全リスクとなります。

RFおよびマイクロ波アブレーションのような電気外科用途では、安全性に影響する機器故障は許容されません。そのため、インターコネクトシステムは高い信頼性と誤接続防止設計を備え、安全かつ効率的な電力伝送を実現する必要があります。

シールド性能

シールド性能とは、同軸ケーブルが周囲の電子機器や外部エネルギー源からどれだけ遮蔽されているかを示します。高エネルギー信号は、同じ周波数帯を使用する他のシステム(例えば2.4GHz帯のWi-Fi)に干渉を与える可能性があるため、十分なシールドが不可欠です。

操作性と統合性

アブレーション用途で使用されるマイクロ同軸ケーブルは、通常、カテーテルアセンブリ(ハンドルを含む)に組み込まれるため、操作性と統合性が重要です。適切なケーブルおよびコネクタの選定により、システム統合が容易になり、最適な性能が確保されます。

軽量でシームレスな操作性は、特にアクセスが困難な部位への精密な操作に不可欠です。ケーブルの柔軟性は、術者の快適性にも大きく影響します。形状記憶の強い硬いケーブルは操作性を低下させ、長時間の処置では疲労の原因となります。

また、インターコネクトの小型・軽量化は、性能や安全性を損なわない範囲で実現されるべきです。小型化は、より低侵襲な処置を可能にし、感染リスクの低減や回復期間の短縮にも寄与します。

ケーブル構成の推奨

ジェネレーターとハンドル(操作部)注)を接続するリードケーブルには、アブレーション用途において以下の重要要件をバランスよく満たすことが求められます。

-低挿入損失
-高い柔軟性
-低表面温度
-軽量
-統合性
-外観

ハイブリッドケーブルアセンブリは、電力、信号、熱マネジメントを統合したソリューションを提供します。このケーブルは、マイクロ波エネルギー伝送用の高出力ケーブルに加え、LED、熱電対、システム制御用の低電圧信号線、さらに冷却用の生理食塩水を循環させる流体ラインを1つのアセンブリに統合したものです。

ハイブリッドケーブルは、ケーブルバンドル、片端(シングルエンド)アセンブリ、両端(ダブルエンド)アセンブリとして提供されるのが一般的です。

ただし、このようなアセンブリは標準品ではなく、市販の既製品として提供されるものではありません。上記のようなリードケーブルアセンブリを設計する際には、医療機器メーカーは、デバイス全体の要件を理解し、そのニーズに応じてソリューションをカスタマイズできる高度な技術パートナーと連携する必要があります。

そのパートナーは、同軸ケーブル、電線、光ファイバー、流体ライン、コネクタ、さらには各種機構部品を含む複数の要素を1つのシステムとして統合できる能力を備えていることが求められます。

注)ハンドル:カテーテルと接続し、エネルギー照射の操作および制御を行う操作部

マイクロ同軸ケーブル

マイクロ同軸ケーブルアセンブリは、小径かつ低損失の同軸ケーブルであり、ハンドル内部からアブレーションカテーテル内へと組み込まれ、電力や信号を伝送します。通常、047サイズ以下の柔軟またはセミリジッドケーブルとして提供されます。

これらの低損失ケーブルは、小径でありながら高い電力伝送効率を実現し、低侵襲治療に求められるサイズ要件を満たします。また、非常に高い柔軟性により操作性に優れ、カテーテルの取り回しを容易にします。さらに、冷却機構を備えたカテーテル内で使用される場合には、高い耐圧性および防水性も求められます。

高性能なRFアブレーション用途で使用されるマイクロ同軸ケーブルの例として、アンフェノールのPhaseTrack®-047、SF-047、InstaBend®-047シリーズなどが挙げられます。

まとめ

RFおよびマイクロ波アブレーションシステムは、特殊かつ高度なインターコネクト設計を必要とする分野です。そのため、開発初期段階からシステム全体を俯瞰して設計することが重要であり、これにより後工程での再設計や認証遅延のリスクを回避できます。

次世代の電気外科システムにおいては、適切なインターコネクト選定が製品の競争力を左右します。最適な結果を得るためには、RF/同軸技術に精通し、システム全体を理解できるパートナーとの連携が不可欠です。また、同軸ケーブルやコネクタにとどまらず、熱管理、電力供給、信号品質などの要件を満たすために、ハイブリッドケーブルのような統合ソリューションが必要となる場合があります。

さらに、医療機器、航空宇宙・防衛などの高信頼性分野での実績を持ち、用途に応じたカスタム設計が可能なサプライヤーを選定することが、最適な性能を実現する鍵となります。

※本記事は、Times Microwave Systems(Amphenolグループ)が執筆し、Medical Design Briefsにて公開された技術記事をもとに、日本語版として再構成しています。